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選挙を通じて事務ミスを考える

 ネットのニュースキーワード自動検索サービスで「事務ミス」をセットしています。この時期、相次いで入ってくるニュースは選挙に関するミスです。
 ミスの内容を概観すると、最も多いのが投票用紙交付ミスで、そのほかに開票集計ミスも報じられています。ある自治体の選挙管理委員会では直近数年間にわたり選挙の都度ミスが続いたため、今回の参議院選挙ではまさに背水の陣で臨んだにもかかわらず、またもやミス発生、という事例もありました。
 報道で紹介されている「原因」を見ると、「ルール通り点検したが見抜けなかった」ケースと「複数の目で確認するルールになっているが一人で作業した」ケースがあります。さらに、関係者の証言から、「(投票日の夜に)開票作業を担当している自治体職員が、翌日の朝の窓口を開く必要から焦り」や、「選管職員の過労」、さらに「自分の本来業務ではないという意識」などの指摘が上がっていると報じられています。
 対策として「投票用紙と同じような色の紙に選挙区、比例代表と書いて投票所の机に貼った」という事例がありましが、もっと早くやれば良かったのに、と感じます。また、「183項目を列挙したチェックノートを作り、責任を明確にするために担当者二人の署名欄を設けた」という事例もありました。チェックリストでミスを防ごうという発想と意気込みはいいのですが、そんなにたくさんの項目を限られた時間の中で、現場でチェックできるのか心配です。ツールに工夫が必要と感じます。
 自治体の幹部は「繰り返し職員に基本的なことを訴え続けるしかない」とコメントしていますが、精神論だけでは解決しない問題と考えます。むしろ、選挙事務に関する関係団体の方の「予算編成と人事権を持つ首長も交え、ミスを根絶する意識の醸成を全職員で図る」とのコメントにあるように、裏付けをもって対応すること、トップ自らが関与することが重要です。
 事務ミス防止はどの仕事でも必要な課題ですが、特に「お金で購えない事務ミス」に関しては特に真剣に考える必要があります。金融機関などが取引の金額を間違えたケースであれば、最終的に金銭的な弁償で解決が可能です。一方、選挙や入学試験などのケースではやり直しが困難な上に、候補者や受験生の人生の運命を変えてしまうリスクが伴います。しかし、この両者とも、その実務を担当している人たちは日常はほかの業務に専念しており、選挙や入試というイベントのときだけ駆り出されているため、どうしても「頼まれ仕事」という意識が働きやすいという皮肉な宿命を負っていることにも注意を要します。

 

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宮崎 敬「事務ミスを防ぐ知恵と技術」近代セールス社