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「事務はサービス業」ではない?

 産業分類では農業、製造業以外の仕事は第3次産業に分類され、一般的にはサービス業と呼ばれています。私や周りの人々も、製造業との対比で「サービス分野」という用語を使い、事務などのオフィスワークはその中の一分野という言い方をしてきました。

 

 「サービス」を科学的に研究する学問として「サービス工学」が提唱され、関連する図書がいくつか出版されています。最近、あらためて手元にある文献を読んだところ、「サービス」と「事務」は非常に似ている面がある一方、本質的にはかなり異なる仕事であることに気付きました。

 

 似ている点としては、サービスも事務も製造業と比べて労働集約的であり、また多くの部分を「経験と勘」に依存していると言えます。会社で経理や給与厚生事務のベテランがいると、その人は長年の経験でスラスラできますが、いざ人が変わるとまるで勝手がわからない、という話は珍しくありません。

また、サービスもオフィスワークも、モノづくりと異なり、仕事の対象それ自体は形がない、または形が定まらないものである点も似ています。

 

 それではこの両者の違い、異なる点は何でしょう?それは、サービスの特徴である「同時性」「消滅性」「異質性」はオフィスワークには該当しない、あるいは該当してはいけないという点です。

同時性とは、提供と利用が同時に行われるということです。ホテルに一泊したら、その一晩でサービスを利用して完了です。また消滅性とは、まさに一泊して完了する、つまりそこで終わるということです。

そして異質性とは、ある人はホテルの部屋のインテリアに好感を持って満足するが、別の人は好みではなく不満である場合があるということです。

 

 これらの点について、オフィスワークの場合はどうでしょうか?

本日作成した給与明細は来週社員の手にわたり、また社員は後日、それをローンの申し込み等に利用することもあります。「同時」ではないですね。また「消滅」どころか、何回も再利用します。

そして、給与明細に示された情報は、客観的な正確さが求められますので、「異質」はあってはならないことになります。

 

 このように整理すると、事務などのオフィスワークは製造業でもなく、サービス業でもなく、そのどちらの仕事にも必要な機能だと言えそうです。

 このことを前提に、これからの研究を進めていきたいと考える次第です。

 

#サービス業 #オフィスワーク #事務