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年金通知ミス

先日、「年金振込通知ミス97万件」という報道がありました。「年金のミス」というキーワードから、「あ~、またか!」と感じましたが、内容を見ると新しい問題が見えてきます。

今回の特徴は「機械化」と「外注化」

過去に発生した「年金記録問題」は、手作業時代のミスの蓄積が主な原因でした。それに対して、今回のケースは、機械処理の過程で「宛名と中身を取り違えて印刷した」ことが原因と報じられています。しかも、その仕事は日本年金機構自身ではなく、その外注先の会社で行われています。

ヒューマンエラーは永遠の課題

「機械化」と「外注化」は事務作業の効率化や品質向上を実現するために欠かせない手法です。
機械化すればスピーディーにミスなく処理が進みます。また、専門のノウハウや設備を持つ会社に外注すれば、自社の固有業務に専念することができます。しかし、ここに2つの大きな落とし穴があることを忘れてはなりません。
ひとつは、機械も人間が操作(設定を含む)しなければ動かず、その人間はミスが避けられないということです。「ヒューマンエラーは永遠の課題」で、今回の事件も、宛名と中身の不一致は「セットミス」が原因と報告されています。現在日本でもRPA (Robotic Process Automation) の導入が進んでいますが、「セットミスで、一晩にメール誤送付1万件」ということも起きかねません。
そしてもう一つは「外注化した仕事は手元を離れるが、その結果は自社の仕事と同じレベルで責任を持つべき」ということです。つまり、自分たちのオフィスから遠く離れた場所で行われた仕事も、「分身」として管理が必要で、しかもそれは工夫が必要ということです。

抜き取り検査と「赤ジャンパー」

私は信託銀行の証券代行業務の責任者として仕事をしていた経験があります。株式事務を発行会社から受託し、さらに封入発送などは別の専門会社に外注していました。3月決算会社の株主総会が集中する6月前後には、数百万名にも及ぶ株主に通知を発送します。宛名、所有株式数、配当金額などの明細に事業報告書などを同封して間違いなく郵送しなければなりません。宛名と中身の不一致が起きないように連続用紙を使うなどの工夫をしますが、なんといっても最後は「現物」が勝負です。
外注先の封入発送専門会社では、自動封入機をスタートさせる前には必ずオペレーションのセット内容を複数メンバーで指差し確認していました。また、作業途中で何回か機械を止めて、作業結果の抜き取り検査をします。仕事のピーク時には、何台も並ぶ自動封入機でこれらの作業がおこなれますので、通称「赤ジャンパー」と呼ばれる責任者が、ルール通りの作業が徹底されているかをパトロールしていました。さらに、この仕事の委託元である信託銀行は、その封入会社の現場を定期的に訪れて、業務の管理状況をチェックしていました。
今回の年金の事件では、送付済みの97万件にとどまらず、未発送を含めて300万件以上の年金通知にミス(宛名と中身の不一致)があったことがその後の調査で明らかになっています。このことから、この外注先には「赤ジャンパー」がいないだけでなく、「ダブルチェック」や「抜き取り検査」を行っていなかった可能性が強いと考えます。そして、委託元である日本年金機構はこの外注先の仕事をどのように管理していたのか、強い疑問を感じます。
事件後、後藤茂之厚労相は就任早々、担当大臣として再発防止を宣言しています。余談ですが、後藤君は中学校の同期です。それだけに、是非今後の改善に期待したいところです。
#年金通知ミス #個人情報漏洩 #ヒューマンエラー #事務ミス防止

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動画シリーズvol.7でも、機械化や外注化に関して解説しています。書籍とあわせてご利用ください。


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コメント: 1
  • #1

    岡田康 (土曜日, 16 10月 2021 10:30)

    「赤ジャンパー」の表題が新鮮で印象深いのでいいとおもう。