本で読んだだけではよく分からないので関連のセミナーに参加した、という経験をお持ちの方も多いと思います。
私も同じ発想で、先日、あるセミナーに参加しました。
会場に入ると、Uの字に並べられた椅子がすでに半分くらい埋まっていました。その名も「U理論ワークショップ 入門編」(主催:社団法人プレゼンシング・インスティテュート・コミュニティ・ジャパン)。U理論とは、マサチューセッツ工科大学上級講師であるオットー・シャーマー博士が提唱したもので、著書の翻訳者の中土井僚氏の定義によれば「過去の延長線上ではない変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織、コミュニティ、社会のレベルで起こすための原理と実践の手法を明示した理論」とのことです。「U」は何かの頭文字ではなく、膠着した現状から出発して新しい未来(または自分)をつくるための意識と行動の変容プロセスを示す「形」として使われています。
当日の参加者約20名の内訳は男女半々で、年代は20代~シニア層にわたっていました。私のようなコンサル系の人もいれば、一見して企業の人事担当では?と感じる方々も何人かいました。二名のインストラクターがU理論の基礎的なポイントをていねいに解説し、時折映像も使いながらかみ砕いた説明が続きました。また、ディスカッションと質疑応答の場面がたくさんあったので、私もこれまで3冊読んでもわからなかったポイントについていくつか質問しました。
この日の成果としては、「何かを変えようとしたときには、まず、自分(たち)が固定観念に縛られていることを自覚できるか、が重要」というポイントでした。変革プロセスの一番の肝とも言える「プレゼンシング」について、イギリスの女性歌手であるスーザン・ボイルのデビューのドキュメンタリーを使って解説が行われました。過去の固定観念(この例では「地味な中年女性」)から解放されて新しい可能を受け入れる本人の姿と、そのプロセスが周囲(審査員や観客)に伝播する状態を実感を伴って理解することができました。しかし、新しい未来に向かうときに自覚されるべき「本当の自分とは?」言い換えると「自分は何者か?」という問いにどうすれば応えられるかに関してはわからないままで会場出ました。
5年前に初めてU理論に関する参考図書を読んだときは、ほとんど理解できずに途中で投げ出しました。しかし、その後もこれと付き合い続けている理由は、ガバナンスの優等生が不祥事を繰り返すなどの事例を目の当たりにする中で、「制度、仕組みだけでは組織や人間は変われない」との思いがあるからです。そして、単純作業をロボットやAIが代替した後の社会で人間は何をすべきか?また、イノベーティブな組織はどうやって生まれるのか?という問いにもなんらかの形でつながっているのではないかという「匂い」を感じるからです。
これからも「U」の字を蛇行しながら試行錯誤する日が続きそうです。
#U理論 #イノベーション
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