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週休2日制で生産性ダウン?

 日本マイクロソフト社(以下「M社」)では社員の週休3日制を導入した結果、社員一人当たりの売上が4割増加したそうです(日本経済新聞1月27日記事)。売上増加には他の要因も影響しているようですが、働き方改革のニュースとしてはインパクトがあります。

 一方、この記事で興味深いのは、労働時間短縮効果にはネガティブな分析結果もあり、1990年代に普及した週休2日制度は日本の生産性を低下させたとの見方もあるとのことです。この二つの事実を並べて浮かぶ疑問に答えるキーワードが、M社が採用した「成果に対して給料を払うという考え方」です。

 

 1990年代といえばさにバブル経済がピークから「崩壊」に向かう時期です。当時、私は信託銀行で外国証券投資の決済と管理の仕事をしていました。残業が多く、タクシー帰宅も頻繁でした。まだ電子メールもない時代でしたから、海外とのやりとりは深夜・早朝の電話、ファックス、テレックスでした。夜遅い日が多いので翌朝はクタクタの状態で仕事を始めていた記憶があります。やってもやっても残業が続くので、会社に行くのが嫌になるほどでしたが、「遅くまで働く人=仕事が集まる人=できる人」という風潮に支えられていたようにも感じます。残業になる要因としては、仕事が多いだけではなく、前工程である運用サイドから来る伝票の不備が多い、海外との時差に対応しなければならない、そもそも仕事のやり方が全く決まっていない、事務ミスの後始末が多すぎる、などが複合していました。日本の社会全体の状況としても、全てが「右肩上がり」の中で長時間残業は当然のことと扱われていました。そして、その状態のままで(=改善が行われることなく)「日本人の働きすぎ批判」をかわす目的で週休2日が浸透したわけですから、経済に与える影響はマイナスだったと言われて納得する次第です。

 

 さて、現在はどうでしょうか?パソコンの普及、メール、クラウドの活用、そして残業規制や在宅勤務の導入など、環境は大きく変わりました。しかし、「遅くまで頑張っている人が偉い」という文化はどの程度変わっているでしょうか?昔から比べればずいぶん良くなったはずですが、恐らく、職場やその個人によりバラツキがあるのではないでしょうか?そのような環境の中で、「残業しない働き方」を奨励することに苦労している人もまだ多いのではないでしょうか?

 これを大きく変えるために効果が期待できるが、人事評価の基準の見直しです。まさに「成果に対して給料を払う」という考え方です。ただし、個人単位の成果のみを評価する方法が行き過ぎると「自分の手柄」だけに固執し、チームでの協力や後輩の指導が犠牲となるので注意を要します。このような弊害を避けるためには、「成果」の中に「他者支援によりチーム全体のパフォーマンスを上げる」という要素を明記し、たとえ支援を提供した個人のアウトプットが減っても、チームに貢献していればその行動を高く評価することが求められます。そして、このような評価方法を活用することにより、チームの生産性が上がり、最終的にその結果が損益計算書に反映されることが期待できます。

 

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